本レビュー:『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』で数学はおもちゃになる
数学。三角関数。加法定理。
ど文系の人は耳をふさぎたくなる単語かもしれない。
大学受験のときに勉強したなぁ、という人は
「咲いたコスモスコスモス咲いた」と、ぶつぶつつぶやいているかもしれない。
かく言う私も受験のために手続き的に勉強しただけの身なので
サインとかコサインとかいうあれらが、何のために存在するのかわかっていない。
三角関数に限らず、そもそも、
中学や高校時代に勉強した数学の公式やグラフ、
あれらは何をしているのか?何かの役に立つものなのか?
本書は中学生・高校生レベルの数学を
わかりやすく楽しい会話形式で解説しているシリーズの内の一冊であるが、
この、「数学とは、いったい何をしているのか?」という問いに
真正面からぶつかっている。
プログラミング教育ツールであるScratch(https://scratch.mit.edu/)上で
サインカーブに興味を持った小学生がいたので
研究がてら復習がてら、たまたま手にとった本だったのだけど
内容より何より、数学への接し方、関わり方の姿勢の記述がおもしろかった。
作中で、「座標平面上の(a,b)を原点を中心にして回転させよう」という課題出てくる。
普通の参考書であれば、ここから最大限言葉を噛み砕いた解説が始まるところだが、
この本では、登場人物の一人が
「なぜですか?」と聞いている。
なぜ、点を回転させるのか? と。
数学の問題の意図するところのわからない我々にとっては、
よくぞ聞いてくれました!という感じ。
この問いに対する回答のひとつとして、
主人公は「それを考えてみたいから」と答えている。
つまり、
主人公にとって数学の図形は<おもちゃ>のようなもので
目の前にそれがあれば、引っ張ってみたりいじってみたりしたくなる、
ただそれだけだというのだ。
これだけ聞くと「うぉー理解できない」「数学オタクと自分はやっぱり違う」
という風にとらえられるかもしれない。
けれども、
もし、子どもたちがみんなこのような姿勢で数学に出会うことができれば、
と考える。
おもちゃをいじる感覚で機械の使い方を習得したり
分解して仕組みを知ったりする子どもはときどきいるが、
同じように、遊ぶ感覚でグラフ上の点を自由にいじることができれば。
好奇心をもって数学に取り組む人はもっと増えるのではないか。
もちろん、どうやっても興味をもてない人もたくさんいるだろうけど。
何かを知ったり考えたりすることは本当はもっと楽しいことなのに。
遊ぶことと学ぶことはいつだって紙一重だ。
中高生にはもちろん、数学が好きじゃなかった大人たちにもおすすめな本でした。
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